『無職転生』ギースとは何者?声優・正体・敵になる経緯を解説

猿顔の魔族ギースが軽い笑みを浮かべ、その背後にヒトガミの白い影が忍び寄る場面 アニメ考察
記事内にアフィリエイト広告が含まれています。

『無職転生』のギースの正体はヒトガミの使徒であり、終盤では恩義からルーデウスと敵対し、最終決戦で命を落とします。

戦闘力を持たない彼が最後の敵対者となった理由は、情報収集・交渉・人員配置によって、戦いそのものを設計できたからです。

※この記事は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』原作終盤の重大なネタバレを含みます。

『無職転生』ギースの正体とは?

ギース・ヌーカディアの正体は、ヒトガミから助言を受けて動いていた使徒です。

ギースは猿のような顔立ちを持つ魔族「ヌカ族」で、かつてパウロ・グレイラットが率いた冒険者パーティー「黒狼の牙」に所属していました。

剣術や魔術を使った戦闘は不得意ですが、料理、交渉、情報収集、野営、素材管理など、戦闘以外の幅広い技能を備えています。

項目 内容
本名 ギース・ヌーカディア
種族 ヌカ族
職業 冒険者
冒険者ランク S級
得意分野 情報収集、交渉、料理、野営、素材管理
苦手分野 剣術・魔術を含む直接戦闘
元所属 黒狼の牙
ルーデウスの呼び方 センパイ
テレビアニメ版声優 上田燿司
原作終盤の立場 ヒトガミの使徒

Web版第228話「裏切り者に逃げられて」では、ギースがヌカ族の生き残りであり、剣も魔術も使えない一方、戦闘以外の能力でS級冒険者となった人物だと説明されています。

ギースの強さは、敵を直接倒すことではありません。

必要な情報を集め、旅程を組み、食料を確保し、強者を交渉の席へ座らせる。剣士や魔術師が力を発揮できる状況を作ることが、彼の戦い方でした。

つまりギースは「戦えない弱者」ではなく、戦闘が始まる前に勝敗の条件を組み立てる支援者です。

この性質は、黒狼の牙にいた頃には仲間を生かすために使われ、原作終盤ではルーデウスを倒すために反転します。

味方だった頃の長所が、そのまま敵になった後の脅威になる。ギースという人物の怖さは、ここにあります。


ギースとルーデウスはいつ出会った?

ギースとルーデウスは、大森林にある獣族の村の牢で出会いました。

テレビアニメでは第14話「只より高いものはない」で描かれ、2021年10月17日に放送されています。

無実の罪で捕らえられたルーデウスに対し、ギースはギャンブルのイカサマが原因で同じ牢へ入れられました。

ルーデウスが後から入ってきたギースを「新入り」と呼んだことから、ギースは彼を「センパイ」と呼ぶようになります。

その後、密輸組織が獣族の村を襲撃。二人は牢を抜け出し、事件の解決に向けて行動をともにしました。

当初のギースは、人当たりがよく、軽口をたたきながらも危険な状況を冷静に見極めるベテラン冒険者として登場します。

年齢も冒険歴も上であるギースが、あえてルーデウスを「センパイ」と呼ぶ。この呼び方には、相手を立てながら懐へ入る彼の対人技術が表れています。

原作終盤まで知った後では、同じ呼び方に別の響きが生まれます。

ただし、最初からルーデウスをだますためだけに「センパイ」と呼んでいたと断定できる描写はありません。

親しみがすべて演技だったのではなく、親しみを抱いたまま敵になった可能性が残るからこそ、最後の会話が重くなるのです。

※画像はAIによるイメージ

アニメでギースの正体は判明している?

放送済みのテレビアニメ本編では、ギースがヒトガミの使徒であることや、ルーデウスと敵対する原作終盤の展開までは描かれていません。

アニメ視聴者から見たギースは、黒狼の牙の元メンバーであり、行方不明者の捜索や転移迷宮攻略を支えた頼れる冒険者です。

露骨に不審な言動を重ねる人物ではないため、アニメだけを視聴している段階で正体を見抜くのは難しいでしょう。

むしろ、長期間にわたって自然な味方として存在していたこと自体が、ギースに仕掛けられた最大の伏線だったと考えられます。


ギースは黒狼の牙で何をしていた?

黒狼の牙でのギースは、料理や情報収集、交渉などを担う後方支援担当でした。

黒狼の牙の主なメンバーは次の6人です。

  • パウロ・グレイラット
  • ゼニス・グレイラット
  • ギレーヌ・デドルディア
  • エリナリーゼ・ドラゴンロード
  • タルハンド
  • ギース・ヌーカディア

パウロ、ギレーヌ、タルハンドたちが戦闘で力を発揮する一方、ギースは冒険を継続するために必要な仕事を引き受けていました。

どれほど強い前衛がそろっていても、食料が尽きれば旅は続きません。

依頼の情報を読み違えれば、想定外の魔物と遭遇する可能性があります。討伐した魔物の素材も、適切に処理して売却できなければ収入になりません。

ギースは派手な一撃を持たない代わりに、仲間が戦場へ到着し、生きて帰り、次の冒険へ進むための穴を埋めていました。

黒狼の牙時代のギースは、強者を動かすのではなく、仲間が強者でいられる環境を守っていたのです。

ギースがパウロを助けた理由は?

ギースがパウロを助けた背景には、黒狼の牙で築いた仲間意識と、ギース本人の判断があったと考えられます。

フィットア領転移事件後、ギースはパウロたちの行方不明者捜索に参加しました。

迷宮都市ラパンでゼニス救出が難航した際には、ルーデウスとエリナリーゼへ救援を求めています。

ここで注意したいのは、ギースの支援行動をすべて「ヒトガミの命令だった」と断定できないことです。

ギースはヒトガミの使徒ですが、常に一挙手一投足を操られていた人形ではありません。

原作で描かれたパウロとの関係や最期の会話を踏まえると、黒狼の牙に対する仲間意識は本物だったと読むのが自然でしょう。

助けた事実と、後に裏切った事実は両立します。

この矛盾を抱えているからこそ、ギースは「最初から全部ウソだった悪役」では片づけられません。


なぜギースの正体は見抜かれなかった?

ギースは歴史の表面上、どの時間軸でも同じ冒険者として生きていたため、オルステッドにも使徒だと見抜かれませんでした。

Web版第228話では、オルステッドが知る過去の時間軸においても、ギースは冒険者として活動し、冒険者として生涯を終えていたと説明されています。

ヒトガミから助言を受けた人物は、本来の歴史と異なる行動を取ることがあります。

オルステッドは、自分が知っている歴史との差異からヒトガミの使徒を探していました。

ところがギースは、追い詰められても正体を明かさず、表向きには従来と同じ人生を歩みます。

歴史が変わっていないように見えたため、オルステッドはギースを使徒の候補から外していました。

実際には「変化がなかった」のではありません。

どの時間軸でも正体を隠し通していたため、観測できる違いが生まれなかったのです。

ギース最大の武器は「怪しくなさ」

ギースの最大の武器は、魔術でも剣術でもなく、普通の冒険者として周囲へ溶け込む能力でした。

少し軽く、少し頼りなく、それでも必要な場面では役に立つ。

強者として注目を集めることもなければ、権力者として警戒されることもありません。

味方にいれば便利ですが、世界の命運を左右する人物には見えない。この絶妙な位置を保ったことで、未来の知識を持つオルステッドの認識さえすり抜けました。

透明だったのではありません。

あまりにも自然にそこにいたため、誰も「正体を探すべき人物」だと思わなかったのです。

ギース、ステルス性能を人柄だけで最大値まで上げている。派手な伏線より、日常へ溶けた違和感のなさのほうが後から効いてきます。


ギースとヒトガミの関係とは?

ギースは危機に陥った際、ヒトガミの助言によって救われ、その後も恩義から協力を続けました。

ギースは剣術にも魔術にも恵まれず、魔物と暴力が身近に存在する世界で、生き残るための直接的な力を持っていませんでした。

そんなギースへ助言を与えたのがヒトガミです。

助言に従ったギースは危機を切り抜け、戦闘以外の能力を生かして冒険者として実績を積み重ねました。

一方で、ヒトガミとの関係は「善良な恩人と忠実な部下」という単純なものではありません。

作中では、ギースがヒトガミによって嫌な目にも遭わされ、故郷や一族に関わる深い傷を負ったことが語られています。

それでもギースは、最終局面でルーデウスに対し、嫌なことをされたとしても、全体として見れば自分はヒトガミに救われたと振り返ります。

ここは作中で明示されたギース自身の認識です。

ヒトガミが善人だったわけでも、ギースが完全に信頼していたわけでもありません。

危険性を理解しながら、それでも「救われた恩」を無視できなかった。ギースの協力を支えていたのは、服従というより、彼なりの義理でした。

ヒトガミへの依存はどう読み解ける?

ここからは筆者の考察です。

ギースとヒトガミの関係には、恩義だけでなく、成功体験を握られた者の依存もにじんでいるように感じます。

ギースは戦闘能力を持たず、一人では生きられないという感覚を抱えていました。

ヒトガミの助言によって生き延びた経験が重なるほど、「自分がここまで来られたのは、あの助言があったからだ」という認識は強くなります。

もちろん、助言を実行した判断力も、各地を歩いた行動力も、人を動かした交渉力もギース自身のものです。

地図を渡されたからといって、誰もが目的地へ着けるわけではありません。

それでもギース本人は、自分の成果を自分だけの力として受け止め切れなかったのではないでしょうか。

ヒトガミを否定すると、ヒトガミの助言によって積み上げた自分の人生まで否定するように感じてしまう。

そうした心理的な結びつきがあったと読むと、危険な存在だと知りながら協力し続けた矛盾にも説明がつきます。

ただし、これは作中の言葉や行動をもとにした筆者の解釈であり、「ヒトガミへの依存」が明確な診断や設定として示されているわけではありません。


なぜギースはルーデウスを裏切った?

直接の理由は、ルーデウスがヒトガミと決別し、オルステッド側へついたことです。

そのうえで心理的な背景として、ギースがヒトガミから受けた恩を返そうとしたことが挙げられます。

Web版では第227話「恩のため」から第228話「裏切り者に逃げられて」にかけて、ギースの正体と敵対の意思が明らかになります。

書籍版では第21巻以降、ギースの行動が大きく変化し、終盤に向けて対立が本格化します。

Web版と書籍版では章立てや追加描写が異なるため、Web版の話数と書籍版の巻数は別々の位置情報として見る必要があります。

ギースは手紙で敵対を宣言した

ギースは手紙を残し、自分がヒトガミの使徒であることや、ルーデウスに勝てる戦力を集める意向を伝えます。

ルーデウスは、その内容からギースが正面から勝負を仕掛けようとしていると受け取りますが、別の罠である可能性も警戒しました。

ギースはルーデウスを不意打ちできる機会がありながら、その場で直接殺害する道を選びませんでした。

ただし、これを「ギースは最後までルーデウスを傷つけたくなかった」と断定することはできません。

殺す機会を見送ったことは作中の事実ですが、その理由には情、戦術上の判断、確実性への疑念など、複数の可能性があります。

それでも、長く付き合った相手を何の感情もなく処分できるほど、ギースが完全な道具になっていなかったことは示唆されます。

裏切ったのに情が残っている。

情が残っているのに敵として全力を尽くす。

この割り切れなさが、ギースの裏切りを妙に生々しくしています。

ギースは何を証明したかったのか?

最終局面のギースは、ルーデウスから「強かった」と認められることを望みます。

Web版第258話「ターニングポイント5」では、自分を強敵だったと思ってほしいという本音を口にし、ルーデウスから一年をかけて戦った強敵だったと認められます。

この場面からは、ギースが単にヒトガミの命令を遂行したかっただけではなく、自分の力が通用した証しを求めていた側面が読み取れます。

ただし、「世界を変えて自分の価値を証明すること」が最初から明確な目的だったとまでは断定できません。

作中で確認できるのは、敗北を迎えたギースが、自分を強敵として認めてほしいと願ったことです。

筆者はここに、戦闘能力を持たない自分への劣等感と、それでも一人前の強者として見られたい思いが表れたと考えます。

皮肉なのは、世界中を巡り、剣神や北神、鬼神を動かし、ルーデウスを一年にわたって苦しめた時点で、ギースはすでに自分の力を証明していることです。

本人だけが最後まで、その実績へ自分で丸をつけられなかった。

ギース、お前はとっくに何者かだったんだよ――と、読み手の胸へ遅れて届く痛みがあります。

※画像はAIによるイメージ

ギースはどのように強者を集めた?

ギースは相手を支配したのではなく、それぞれが戦う理由を利用してヒトガミ側へ引き込みました。

原作終盤で関わる主な戦力は、次のとおりです。

人物 立場・参戦に関わる事情
北神カールマン三世アレク 強者との戦いや英雄としての在り方を求めて動く
元剣神ガル・ファリオン 剣神の座を失った後、自身の剣と存在意義を示そうとする
鬼神マルタ ビヘイリル王国側の事情と立場から戦いへ参加する
冥王ビタ 幻覚や精神への干渉を用い、スペルド族の村を内側から崩そうとする
バーディガーディ ヒトガミに対する恩義から協力し、闘神鎧を装備する

参加理由は全員同じではありません。

ギースが一人ひとりを完全に操ったわけでも、全員がヒトガミへ忠誠を誓ったわけでもありません。

ギースは各人物の目的や欲求を見極め、「ルーデウスと戦う理由」を用意して同じ戦場へ集めました。

書籍版第25巻では、スペルド族の村へ迫る討伐隊とともに、北神カールマン三世、元剣神ガル・ファリオン、鬼神マルタらが登場します。

第26巻では、闘神鎧をまとったバーディガーディが、ギースとともに最終局面へ姿を現します。MFブックスの第26巻紹介でも、バーディガーディはギースとともに現れたヒトガミ側の使徒として紹介されています。

ギースが行ったのは、仲間集めというより利害の接続です。

この方法は強力でしたが、弱点もありました。

彼らはギースと同じ未来を望んで集まった仲間ではなく、それぞれの事情で一時的に同じ側へ立った者たちです。

Web版第258話でギース自身が振り返るように、剣神や北神たちはギースの指示より自分の目的を優先しました。

戦う理由は用意できても、命令を聞く理由までは作れなかった。

ギースの戦略は人を戦場へ運べましたが、人の心を一つの方向へそろえるところまでは届かなかったのです。


ギースの最後はどうなる?

ギースはルーデウスの広範囲火炎魔術で全身に重い火傷を負い、敗北を認めた後、ギレーヌと会話しながら息を引き取ります。

Web版では第258話「ターニングポイント5」で、ギースの死亡場面が具体的に描かれています。

最終決戦でルーデウスは、森一帯を巻き込む火炎魔術「フラッシュオーバー」を使用しました。

戦闘後、ルーデウス、ルイジェルド、ギレーヌ、イゾルテは、黒く焼けた森の大木の陰で倒れているギースを発見します。

ギースは全身に大火傷を負い、当初は死体に見えるほど黒く焼けていました。

ルイジェルドの第三の目によって生存が確認されますが、すでに虫の息です。

つまり、ギースを直接その場で斬った人物がいるわけではありません。

死亡につながった直接の負傷は、ルーデウスが放ったフラッシュオーバーによる全身の火傷です。

ギースは最期に何を話した?

瀕死のギースは、用意していた対策がすべて破られ、剣神、北神、鬼神らが自分の指示を聞かなかったと振り返ります。

そのうえで、ルーデウス側の仲間が指示を聞いたのは、ルーデウスが対話を重ね、信頼を得て、正式に仲間になってもらう努力をしたからだと認めました。

ギースは自分の敗因を理解します。

戦う理由を用意し、各地から強者を集め、裏から動かすだけでは、本当の意味で人を率いることはできなかったのです。

さらにギースは、ヒトガミから嫌なことをされたとしても、自分は救われたのだと語ります。

そしてルーデウスへ、自分を強敵だったと思ってほしいと頼みました。

ルーデウスは、何か一つ歯車が違えば立場が逆になっていたかもしれないこと、これまでで最も厳しい戦いだったことを伝えます。

ギースは涙を流しながら礼を述べました。

その後、黒狼の牙の元仲間であるギレーヌが前へ出ます。

ギースは「先に逝く」という意味の言葉を残し、ギレーヌはパウロによろしく伝えてほしいと応じました。

ギースは、いつか皆で再び酒を飲みたいという思いを口にしながら、会話の途中で息を引き取ります。

遺体はルーデウスたちによって荼毘に付され、骨が回収されました。

ルーデウスは、パウロの隣に墓を作ることを考えています。

これは処刑でも、憎悪に満ちた決着でもありません。

敵として倒された男が、最後には黒狼の牙の仲間として見送られる。ギースの人生にあった二つの顔が、一つの場面へ重なる最期です。


ギースは『無職転生』のラスボスなのか?

ギースはルーデウスの物語における最終敵対者の中心ですが、戦闘上の最大の敵は闘神鎧を装備したバーディガーディです。

また、作品世界全体における根源的な敵はヒトガミです。

そのため、ギース一人を一般的な意味での「絶対的なラスボス」と断定するより、最終決戦を設計したキーパーソンと表現するほうが正確でしょう。

ギースは世界最強の剣士でも、圧倒的な魔力を持つ魔術師でもありません。

それでも、ルーデウスを倒せる人物を探し、弱点を調べ、罠を用意し、複数の強者を同じ戦場へ投入しました。

彼との戦いは、最後に対面した瞬間だけを指すものではありません。

正体が判明し、逃亡してから最終決戦へ至るまで、ルーデウスは約一年にわたってギースの策と戦っています。

だからルーデウスも、最期のギースを「強かった」と認めました。

攻撃力ではなく、状況を作り続ける力によって最後の敵になる。

この役割は、戦闘以外の技能でS級へ上り詰めたギースにしか担えなかったものです。


ギースの裏切りをどう考える?

ここからは、作中で明示された事実を踏まえた筆者の考察です。

ギースという人物を読み解く軸は、戦闘以外の能力、自己評価の低さ、人間関係の築き方の三つに整理できます。

戦闘以外の能力が味方から敵へ反転した

黒狼の牙にいた頃、ギースは仲間が無事に戦い、生きて帰るために働いていました。

情報を集め、食事を作り、素材を管理し、旅を成立させる。

一方、最後の戦いでは同じ能力を、ルーデウスを追い詰めるために使用します。

情報を集め、対策を考え、強者と交渉し、戦場へ配置する。

黒狼の牙時代と最終戦で、ギースが行っていることの構造はほとんど変わりません。

変わったのは、誰を生かすために使ったかです。

善人専用の技能と悪人専用の技能があるわけではない。

同じ才能でも、向ける相手と目的が変われば、救援にも脅威にもなる。ギースの役割反転は、その事実をかなり残酷な形で見せています。

ギースは自分の能力を認め切れなかった

ギースは戦闘能力を持っていません。

しかし、戦闘以外の技能でS級冒険者となり、黒狼の牙を支え、最終的には世界屈指の強者を動かしました。

客観的に見れば、十分すぎるほど非凡な人物です。

それでも最期のギースは、ルーデウスに自分を強敵だったと認めてほしいと願いました。

この言葉からは、自分の力に対する確信の弱さが示唆されます。

ギースは結果を出し続けてきたのに、その価値を自分の内側だけでは確定できなかった。

ヒトガミの助言や、ルーデウスからの評価といった外部の言葉がなければ、自分が何者なのかを決められなかったのではないでしょうか。

ルーデウスから「お前は強かった」と伝えられ、ようやくギースは自分の戦いに意味を与えられた。

この場面、勝敗より先に自己評価の決着が来るんです。感情にドリフトをかけながら、最後の最後で真正面から刺してきます。

敗因は人を集められなかったことではない

ギースは人を集めることには成功しました。

剣神、北神、鬼神、冥王、闘神という規格外の存在を同じ陣営へ引き込んでいます。

それでも敗れたのは、集めた者たちと共通の未来を作れなかったからだと筆者は考えます。

ギースは相手の欲求を読み、戦う理由を用意しました。

しかし、その関係は目的が一致している間だけ成立するものでした。

一方のルーデウスは、家族や仲間と長い時間を過ごしています。

助け、助けられ、失敗し、謝り、時には敵対した相手とも関係を作り直しました。

最終決戦でルーデウスの指示が通ったのは、主人公だから自動的に全員が従ったわけではありません。

それ以前の人生で築いた信頼が、戦場で機能したのです。

ギースは人を戦力として配置した。

ルーデウスは、人に支えられる人生を積み重ねた。

最終決戦は、どちらの陣営に強い人物が多いかだけを競った戦いではありません。

利害によって接続された人脈と、時間によって育てられた関係の決着だったと読めます。

ギースとルーデウスは似ていた

ギースとルーデウスには、自分の価値を信じられない状態から人生を始めたという共通点があります。

ルーデウスは前世で社会との関係を失い、転生後の世界で生き直そうとしました。

ギースは戦闘能力を持たず、この世界で一人では生きられないという感覚を抱えていました。

二人を分けたのは、他人から受けた助けをどう受け止めたかです。

ルーデウスは、自分一人の力ではないことを認め、家族や仲間との関係を広げていきました。

ギースは、ヒトガミに救われた経験を重く受け止め、その恩を返す側へ進みます。

ルーデウスは「一人では無理だから、一緒に進む」と考えた。

ギースは「一人では無理だから、救ってくれた相手へ義理を返す」と考えた。

どちらも他者を必要としています。

ただし、一方は相互的な関係へ進み、もう一方は恩人との縦の関係から抜け出せませんでした。

だから二人の対立は、正義の主人公と邪悪な裏切り者の戦いだけでは終わりません。

似た傷を持つ二人が、他者とのつながり方について別の答えを選んだ末の衝突なのです。


まとめ

『無職転生』のギース・ヌーカディアは、料理、交渉、情報収集などを武器にS級へ上り詰めたヌカ族の冒険者です。

かつては黒狼の牙の一員としてパウロたちを支え、フィットア領転移事件後の捜索やゼニス救出にも協力しました。

しかし原作終盤で、ヒトガミから助言を受けていた使徒であることが判明します。

ルーデウスがオルステッド側についたことで敵対し、剣神、北神、鬼神、冥王、闘神バーディガーディらを巻き込む戦いを作り上げました。

最終決戦では、ルーデウスのフラッシュオーバーによって全身に大火傷を負います。

瀕死の状態で敗因を認め、ルーデウスから強敵だったと評価された後、ギレーヌと黒狼の牙の思い出を語りながら死亡しました。

ギースは、何もできなかったから負けた人物ではありません。

戦闘以外なら何でもできたのに、その能力で結んだ関係を、本当の仲間へ育てられなかった人物です。

軽い声で「センパイ」と呼んでいた男が、最後には泣きながら強敵だったと認めてほしいと願う。

その瞬間、過去の笑顔も、料理も、軽口も、裏切りだけでは塗り潰せなくなります。

腹立たしいのに、嫌い切れない。

敵なのに、勝利を喜び切れない。

ギースの最後が胸に残るのは、彼が悪役になる前に、確かに仲間だったからです。


よくある質問

『無職転生』ギースの正体は何?

ギースの正体は、ヒトガミから助言を受けて行動していた使徒です。

どの時間軸でも普通の冒険者として振る舞い、正体を隠していたため、オルステッドにも長期間見抜かれませんでした。

なぜギースはルーデウスを裏切った?

直接の理由は、ルーデウスがヒトガミと決別し、オルステッド側についたことです。

ギースはヒトガミの危険性を理解しながらも、自分を救った恩を返すために敵対したと作中で語っています。

ギースは誰に倒された?

ギースは、ルーデウスが最終決戦で使用した火炎魔術「フラッシュオーバー」によって全身に重い火傷を負いました。

その後、焼けた森でルーデウスたちに発見され、会話の途中で息を引き取っています。

ギースの遺体はどうなった?

ギースの遺体はルーデウスたちによって荼毘に付され、骨が回収されました。

ルーデウスは、黒狼の牙でともに冒険したパウロの隣に墓を作ることを考えています。

ギースはラスボスなの?

ギースは最終決戦を設計した敵側の中心人物ですが、戦闘上の最大の敵は闘神鎧を装備したバーディガーディです。

作品世界全体の根源的な敵はヒトガミであるため、ギースは「ルーデウスの物語における最後の敵対者」と表現するのが適切です。

ギースの声優は誰?

テレビアニメ版のギース役は上田燿司さんです。

2021年10月15日に起用が発表され、同年10月17日放送の第14話「只より高いものはない」から登場しました。


主な確認資料

  • TVアニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』公式サイト「第14話 只より高いものはない」
  • TVアニメ公式ニュース「ギース・ヌーカディア役は上田燿司に決定」(2021年10月15日)
  • 理不尽な孫の手『無職転生 – 異世界行ったら本気だす -』Web版第227話、第228話、第242話以降、第255~258話
  • MFブックス『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』第21巻、第24~26巻
  • 『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ スペシャルブック』

※Web版と書籍版では章構成や追加描写が異なるため、話数と巻数は別媒体の位置情報として記載しています。

神原 誠一(かんばら せいいち)
アニメ評論家 × 戦略ブロガー × 感情翻訳家
『アニメ反射鏡』運営

コメント

タイトルとURLをコピーしました